はじめに
最近SNSや自己啓発書でよく目にするMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)。
「私はINFJだ」「職場にはESTJが多い」といった話を聞いたことはありませんか?
でも、MBTIには科学的根拠はあるのでしょうか?
心理学的に正しい性格診断なのか、それとも単なるエンタメなのか、詳しく解説していきます。
1. MBTIとは何か?
MBTIは、心理学者カール・ユングの性格理論を基に、キャサリン・クック・ブリッグスと娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズが開発した性格分類ツールです。
MBTIでは、人間の性格を以下の4つの二択(ディコトミー)で分類します。
- 外向(E)–内向(I):エネルギーの向け方
- 感覚(S)–直感(N):情報の取り入れ方
- 思考(T)–感情(F):意思決定の方法
- 判断(J)–知覚(P):外界への対応の仕方
この組み合わせで16種類の性格タイプが生まれます。
例えば「INFJ」は、内向・直感・感情・判断のタイプを指します。

2. MBTIの科学的信頼性は?
心理学でいう科学的根拠とは、主に信頼性(Reliability)と妥当性(Validity)を指します。
信頼性とは
- 再検査信頼性:時間を置いても同じ結果が出るか
- 内的整合性:質問の一貫性が保たれているか
MBTIの信頼性の現状
- 再検査で結果が変わる人が20〜50%存在する
- 質問項目に矛盾が生じやすく、測定精度が安定しない
➡ つまり、MBTIは時間や状況によって診断結果が変わる可能性が高いツールです。

3. MBTIの妥当性の問題
二択で性格を分類する問題
- 人間の性格は連続的でスペクトラムとして表現される
- MBTIの二択設計では微妙な差を無視してしまう
現実のパフォーマンス予測力が低い
- MBTIタイプで職務適性や学業成績を正確に予測することは難しい
他の心理尺度との比較
- 標準的な心理学モデルである**ビッグファイブ(Big Five)**との相関は部分的
- 性格全体を正確に把握するには不十分
4. なぜMBTIは人気なのか?
科学的には課題が多いMBTIですが、人気の理由は明確です。
- 自己理解のきっかけになる
「自分は外向型かもしれない」と気づくきっかけになる - 会話のネタになる
チームや友人とタイプを共有することで、話が弾む - 肯定的バイアス
全タイプがポジティブに受け止められ、楽しみやすい
5. MBTIを正しく活用する方法
MBTIを楽しみつつも、科学的に正しい使い方は以下です。
活用例
- 自己分析のツールとして
自分の行動や思考傾向を理解する参考にする - コミュニケーションのヒントとして
チーム内の関係性や対応方法の参考にする - 学術研究には使わない
性格研究や採用判断には信頼性の高いビッグファイブを使用

6. まとめ
MBTIは科学的には完璧な性格診断ではありませんが、自己理解やコミュニケーションのきっかけとしては十分価値があります。
- 信頼性が低い:結果が時間や状況で変わる
- 妥当性が限定的:性格全体や職務適性を正確に測れない
- 二択設計の限界:人間の性格を連続的に表せない
➡ MBTIは「楽しみながら自己理解を深めるツール」として使うのが最も現実的です。
心理学的に正確な性格分析を求めるなら、ビッグファイブなど科学的に検証されたモデルを併用するのが理想です。
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