はじめに:なぜ “今年の冬” が気になるのか
2020年代に入り、夏の猛暑・台風・異常気象が頻発しており、冬の寒さも「例年通り」では済まされないという認識が高まっています。特に2025年という節目の年、秋の気象傾向・海水温・大気循環の変化が冬の寒波・積雪・冷え込みにどう影響するかに注目が集まっています。
冬の寒さ・雪・寒波は、単に「気温が低い」だけでなく、交通・電力・命に関わるインフラ・健康(ヒートショック等)に直結します。したがって「今年の冬はどうなるか」を早めに把握し、備えることは非常に重要です。
本記事では、複数の信頼できる気象機関の最新見解を整理し、「どの地域で」「どのくらい冷えるか」「何に備えたらいいか」を詳しく読み解きます。
結論(先に要点をまとめる)
- 2025年冬(12月~2月)は、太平洋赤道域の El Niño–Southern Oscillation(ENSO) 状況の影響を受け、地域ごとに寒さ・雪の傾向がかなり異なる可能性があります。
- 北日本・日本海側では 寒気の南下+海からの湿った空気による積雪増・冷え込み強化 のリスクが高まる見込みです。
- 一方、太平洋側(関東以南・東海など)では「平年並もしくはやや暖かめ」の可能性も示唆されつつ、短期間の強い寒波には警戒が必要です。
- 全体として「極端な冷え込み」「異常な温暖化」一方でなく、“平年並み+変動幅大”という形での冬になる可能性が高く、「備え」が鍵となります。
- 防寒・雪対策・非常対策(停電など)を早めに整えることが、安心した冬を過ごすためのポイントです。
「どうして寒さの傾向が変わるのか」:科学的背景
ENSO(エルニーニョ/ラニーニャ)とは何か
ENSO(El Niño–Southern Oscillation)は、太平洋赤道域の海水温・大気循環の変動を指し、世界の気候に強く影響します。簡単に言えば、次の三つの状態があります:
- エルニーニョ(El Niño):海水温が平年より高め
- ラニーニャ(La Niña):海水温が平年より低め
- 中立(ENSO-Neutral):特定傾向が出ていない状態
ラニーニャとなると、例えば日本海側で湿った風が入り雪を増やしやすいという傾向が過去に観測されています。
つまり、冬の寒さ・雪の量はこのENSOの影響を強く受けるため、まずこの状態を押さえることが重要です。
今回(2025年冬)に注目される背景要因
- Japan Meteorological Agency(JMA)の発表によると、2025年9月時点では ENSOは「中立(ENSO-Neutral)」状態だが、ラニーニャに移行する兆しもあるとされています。気象庁データサイト+1
- また、米国 Climate Prediction Center(CPC)では「ラニーニャ条件が2025年12月〜2026年2月にかけて継続する可能性がある」としています。cpc.ncep.noaa.gov
- つまり、「弱めのラニーニャ(あるいはラニーニャ様の状態)」が冬の間に発現する可能性があり、それが東アジアの冬の気候を変えるカギになるという見方です。
ラニーニャが冬にもたらす影響(日本の場合)
ラニーニャが起こると、一般的に以下のような傾向が「過去データ通り」出やすいとされます:
- 日本海側:シベリア高気圧からの北西風が強まり、海上で水蒸気を含んだ風が日本海側の山沿いに雪を降らせやすくなる。
- 太平洋側:比較的乾燥・暖かめになる可能性がある。ただし寒気の南下が起きれば突然冷え込む。
- 全体として「寒波が来やすい」「雪がまとまる可能性がある」条件が揃いやすい。
例えば、英国・豪州のスノー予報サイトでも「日本の2025-26冬はラニーニャで上振れ雪の予想あり」などの分析が出ています。mountainwatch.com+1
ただし、「ラニーニャだから必ずこうなる」というわけではなく、**他の要因(北極振動・太平洋高気圧・海水温異常など)**との組み合わせで「いつ・どこで・どれだけ」の寒気が来るかが決まるため、注意が必要です。
変わる気候背景:温暖化の影響も
近年は温暖化の影響で「過去の冬のパターン」がそのまま当てはまらないことも増えています。例えば、海水温が高めに推移して湿った空気が入りやすい、寒気が強まっても雪ではなく雨になる、というケースも散見されます。
そのため「平年並みかやや寒め+変動幅が大きめ」という“やや不確実な冬”になる可能性も念頭に置くべきです。
最新機関の見解(2025年10月時点)
以下、複数の機関の最新見解を整理します。これにより、「どこまで寒くなるか」「どの地域が特に注意か」のヒントが見えてきます。
日本気象庁(JMA)による見通し
JMAの「エルニーニョ/ラニーニャ監視速報」によれば、2025年9月時点で、「ENSOは中立状態だがラニーニャ様の特徴も見られる」としています。気象庁データサイト
具体的には以下のようなポイント:
- 赤道太平洋中央~東部で海水温偏差が-0.5℃付近。
- 貿易風(赤道域低緯度の東風)がやや強め。
- 結果として「ラニーニャ様」の大気・海洋の結びつきが弱いながらも確認されている。
- 予測では「冬の前半(12〜1月)にはラニーニャ傾向が強まる可能性」「後半(2月以降)には中立に戻る可能性が80%」としています。
つまり、初期に寒気・雪が強まる可能性を示唆しつつ、「長期間の強いラニーニャには至らない」可能性も高く、「上下変動の大きい冬」になる覚悟が必要です。
CPC(米国気象機関)による見通し
CPCの「ENSO診断討論」では、2025年10月9日付で以下のように発表されています:cpc.ncep.noaa.gov
- 現在ラニーニャ条件が確認されている(Niño-3.4指数で-0.5℃程度)
- 冬季(12月〜2月)にかけてラニーニャ継続の可能性があり、ただし「弱めのラニーニャ」である見込み。
- 1月〜3月にはENSO中立への移行が55%程度と推定。
この発表は「ラニーニャ継続を前提に冬の見通しを立てるべき」という強いメッセージです。
スノー/ウィンター関連予報(民間も含む)
例えばスキー・アウトドア系情報では、北海道のリゾート地である ニセコ町では「早めのシーズンスタート・積雪上振れ可能性あり」とのレポートが出ています。ニセコユナイテッド
また、世界のスノー予報サイトでも「日本の2025-26冬はラニーニャ傾向で平均以上の雪になる可能性あり」と分析されています。mountainwatch.com
これら民間の予報は娯楽・スポーツ視点でのものであり「生活・交通・インフラ」の視点とは少し異なりますが、雪量・寒波リスクの参考になります。
地域別に見る「冷え込み」予想:どこでどれだけ冷えるか
以下、地域ごとに「冷え込み・雪・風・注意点」を整理します。都道府県レベルや市町村レベルでの予測ではありませんので、あくまで傾向としてお読みください。
北海道・東北地方(特に日本海側山沿い)
傾向:
- シベリア高気圧が強まると、北西〜西風が日本海を越えて沿岸部・山沿いに流入し、湿った空気を多量に雪・吹雪に変える典型パターンが起きやすくなります。
- 今回、ラニーニャ傾向+日本海海水温の影響により、「積雪量が平年より多め」「寒気の襲来が数回強くなる可能性」が高まっています。
- 出典例として、ニセコでは「早期の積雪増・パウダースノーの機会あり」と報じられています。ニセコユナイテッド
注意点: - 交通(高速・鉄道・空港)で除雪・吹雪による遅延・中断リスク。
- 屋根・雪下ろし/雪庇落下対策。
- 寒気襲来時は気温が-10℃以下、体感温度では-20℃近くになることも。
備え: - 屋内の断熱/暖房効率向上。
- 外出・作業用に保温・防風性能の高いウェア。
- 雪・氷の除去手段/スタッドレスタイヤやチェーンの早期点検。
北陸~北関東(日本海側~内陸山沿い)
傾向:
- 日本海側の典型的な冬型気圧配置が起きやすい区域。ラニーニャ傾向が出ると、広く雪・冷え込みが強まる可能性があります。
- 内陸部や山間部では「夜間・早朝の冷え込み」が一段と強く、霜・凍結・路面凍結のリスク増。
注意点: - 雪による日常生活の支障(通勤・買物・地域物流)
- 朝晩の寒暖差が大きく、ヒートショックなど健康リスクも増加
備え: - 朝晩の暖房開始タイミングの見直し。
- 靴下・室内用スリッパ・カバー付き暖房器具の用意。
- 車・バイク・自転車利用者は凍結対策の確認を。
関東南部・太平洋側(関東・東海・南関東など)
傾向:
- 全体として「平年並み~やや暖かめ」の可能性もありますが、「寒気直撃」した場合は急激に冷え込む可能性があります。
- 太平洋側で雪が多くなるという一般的なパターンとは少し異なり、むしろ冷たい晴天・放射冷却による冷え込みの方が問題になることも。
注意点: - 朝晩の冷え込み・屋内外の温度差で体調を崩しやすい。
- 山沿いや標高のあるエリアでは雪・凍結も想定。
備え: - 日常の防寒は「重ね着+断熱(窓・カーテン)」。
- 職場・自宅共に暖房温度の見直し。
- 外出時:保温性の高いアウター、手袋・ネックウォーマーなどの基本装備。
西日本・南西諸島
傾向:
- 厳寒期としての寒さ・積雪リスクは本州上部地域ほどではありませんが、例外的な冷え込み・低温注意は必要です。
- 特に山沿い・標高の高い地域では雪・氷結も起きうるため侮れません。
注意点: - 寒暖差・朝晩の冷え込み対策が鍵。
- 雪・氷のリスクを過小評価しない。
備え: - 軽めの防寒装備+室内断熱。
- 山間地域や離島では輸送・電力の不安定リスクも頭に入れておく。
寒さを読み解くための指標・チェックすべきポイント
冬を「静観」するだけでなく、備えるためには以下の指標を押さえておくと役立ちます。
- 海水温(特に日本海・黒潮域・赤道太平洋)
→ 海水温が平年より高ければ、湿った空気の供給源が強まり、雪・雨ともに“量”が増えやすくなります。 - 北極振動(AO)・太平洋振動(PDO)などの大気循環指標
→ 極域の気圧配置が変わると、寒気の南下パターンや停滞パターンが形成され、寒波の到来回数・強度に影響。 - ENSO状態(Niño-3.4指数・NINO3指数)
→ 冬の大まかな傾向を掴む最も確実な指標の一つ。ラニーニャ傾向が強まれば「日本海側雪・寒気強化」の可能性。
→ 現在(2025年10月時点)は中立→ラニーニャ移行の可能性あり。IRI - 地域の地形・標高・海岸近くか否か
→ 海岸沿いや山沿い、内陸部・標高差によって「体感寒さ・積雪量・凍結の出やすさ」が大きく異なります。 - 暖房・断熱・インフラ整備状況
→ 気象データだけでなく、「住環境(断熱・暖房能力)」「交通網・除雪体制」「電力・燃料備蓄」も大きなポイント。寒さリスク=住環境リスクでもあります。
実生活で「困らない」ための冷え対策:段階別リスト
以下は、「冬が来る前から実践すべき備え」「冬が始まってから定期的に確認すべき備え」「寒波・積雪発生時の特別対策」の3段階に整理しています。
ステージ1:冬が来る前に準備したいこと
- 屋内の断熱を強化:窓用断熱フィルム・二重カーテン・すきま風対策。
- 暖房器具の点検・清掃・燃料補充(石油ストーブ・ファンヒーター・エアコン暖房)。
- 寝具のアップグレード:毛布・電気毛布・湯たんぽなど。
- 停電・燃料切れ時の非常用手段を用意:カセットコンロ・ガスヒーター・簡易湯たんぽ・非常用毛布。
- 車・冬用タイヤやチェーン・バッテリー点検(雪地域の場合)。
- 医療・薬・高齢者・子どもなど「寒さ弱者」への配慮を事前に整理。
ステージ2:冬が始まったら定期的に確認すべきこと
- 朝晩の気温変化をモニタリング:予報と実測のズレがないか。
- 湿度・換気:暖房使用時は乾燥による体感の冷え込みも出やすいため、加湿器など併用。
- 屋外・移動時の装備チェック:防風性・保温性のあるアウター・手袋・ネックウォーマー等を駆使。
- 積雪・凍結が起きそうな日には早めの行動・準備(除雪、凍結防止剤、予備時間確保)。
- 停電や燃料切れの兆候に注意:強風・吹雪・重雪時には特に電力/ガス/灯油の状況を確認。
ステージ3:寒波・大雪・低温時の特別対策
- 屋内では「低温やけど」「ヒートショック」に注意:暖房の一斉オフや極端な温度差を避ける。
- 屋外では「吹雪・暴風雪」「雪庇落下」「屋根の雪下ろし」に対する安全確保。
- 車・公共交通を使う場合、遅延・運休の可能性を見込んだ余裕ある行動計画。
- 停電時には、湯たんぽ・簡易毛布・携帯充電手段・照明の確保。
- 高齢者・乳幼児・持病のある人への個別対応:暖房効率が低い部屋を避け、体調変化に注意。
おすすめ防寒グッズ(用途別・編集部セレクト)
以下は、寒さ対策として実際におすすめできるグッズを【用途別に】整理しました。購入の際は、各商品レビュー・最新価格・サイズ・安全性を確認してください。
A. 就寝・室内用:電気毛布・湯たんぽ・毛布
- 電気毛布:寝る前に布団を暖める・就寝中の足元冷え対策に有効。タイマー機能・温度自動オフ・低消費電力モデルがおすすめ。
- 湯たんぽ:停電時にも使えるため非常用にも最適。カバー付きで低温やけど防止仕様を選びましょう。容量500〜2000 ml程度。
- 毛布:ウール混・マイクロファイバー・二重構造タイプなど。暖かさ+通気性+洗濯性をチェック。
B. 屋内暖房・断熱グッズ:断熱カーテン・窓用シート・ハイブリッド加湿器
- 断熱カーテン・窓用断熱シート:窓からの熱ロスを抑えると暖房効率が上がります。特に夜間・窓近くの冷え込みに効果あり。
- ハイブリッド加湿器:暖房使用時は室内が乾燥しやすく、体感温度が下がるため、適度な湿度50%前後を目安に。抗菌機能付きなら衛生面も安心。
C. 外出・屋外作業用:防風ジャケット・保温インナー・携帯用カイロ
- 防風・保温性アウター:雪地域・寒風吹きすさぶ地域では“風を遮る”機能が最も重要。ネックウォーマー・手袋なども。
- 保温インナー(ヒートテック系など):重ね着を意識して、体幹を冷やさない構成を。
- 携帯用カイロ・ヒートインナー:外出時・移動時・雪かき時など、一時的に温めたい場面で重宝。
D. 非常・バックアップ用:カセット式暖房・非常用毛布・携帯電源
- 停電・燃料切れ時に備え、カセット式暖房・簡易湯たんぽ・非常用毛布(アルミフィルム付きなど)を準備。
- 携帯電源バッテリー・懐中電灯・充電器など「暖房+情報取得手段」のセット化もおすすめ。

チェックリスト:冬の「もしも」に備えるために
- 灯油・ガス・電力のストック状況を確認。
- 屋根・排水・雪下ろし・雪庇落下などの安全点検を冬本番前に。
- 車やバイク・自転車を使う場合、スタッドレスタイヤ・チェーン・バッテリーの点検。
- 散水・凍結による道路・駐車場の滑りやすさ対策。
- 高齢者・持病のある方・乳幼児がいる家庭では「暖かい居場所確保プラン」を制定。
- 雪・寒波発生時には自治体・気象庁の情報を「早めに」入手できるよう、アプリ・サイトを登録。
まとめ:データから読み取る“賢い備え”
2025年冬は、気象データから読み取ると、「ラニーニャ傾向が早期に出る可能性あり」「しかし長続きはせず中立状態に戻る可能性も高い」というやや複雑な状況です。つまり、例年よりも「寒さ・雪の変動が大きく」「地域・タイミングによって極端な変化もあり得る」という構図です。
特に日本海側・北日本では雪・寒気強化の可能性が高く、太平洋側では「平年並み~やや暖かめ」ながらも、寒波来襲時の冷え込み・凍結対策が不可欠です。
一方で、備えをきちんと整えておけば、冬の生活の質(快適さ・安全)を大きく上げることができます。具体的には「断熱」「暖房+保温」「非常対策」をコアに、地域・家族構成・住環境に応じた準備を進めましょう。
最後に、気象機関(JMA・CPC・IRI・ECMWFなど)の月次・週次予報も定期的にチェックし、「当初予想と違う動きが出ていないか」を確認することをおすすめします。
(参考)JMA、CPC、IRIの公開データ・長期予報。IRI+1
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