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【金をも溶かす伝説の液体】王水とは何か?

元素
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🔷 1. 王水とは?──金をも溶かす“化学界の怪物”

● 定義:

王水とは、濃塩酸(HCl)3に対して濃硝酸(HNO₃)1の体積比で混合した強酸性の液体
ラテン語で“Aqua Regia”(王の水)と呼ばれ、金属の中でも特に安定した「金(Au)」すら溶かすことで有名です。


🔷 2. なぜ金が溶ける?──王水の反応メカニズム

金は非常に安定な金属で、単独の酸(硫酸・塩酸・硝酸)では一切溶けません
しかし、王水では以下の2段階反応により溶解します。


✅ ステップ①:硝酸が金を酸化

まず、硝酸(HNO₃)が酸化剤として作用します。

金(Au)が電子を失い、金イオン(Au³⁺)となります。

Au + 3 HNO₃ → Au³⁺ + 3 NO₂↑ + 3 H₂O

この反応では、一部の硝酸が還元されて有毒な二酸化窒素(NO₂)を発生します。


✅ ステップ②:塩酸が錯体を形成して安定化

次に、塩酸中の塩化物イオン(Cl)が、金イオンと結合して安定な錯体イオンを作ります。

Au3+ + 4 Cl → [AuCl₄]

➡️ これにより、溶けた金イオンが液中に保持され、さらに溶解が進行します。
つまり、「酸化+錯体形成」のコンビネーションがカギなのです。



🔷 3. 王水の全体反応式(まとめ)

複数の反応をまとめると、代表的な王水と金の反応式は以下のように表されます。

Au + 3 HNO₃ + 4 HCl → [AuCl₄] + 3 NO₂ + 3 H₂O

この式が意味することは──
金は酸化されてイオン化し、塩化物イオンと錯体を形成、そしてガスが発生して反応が進むということ。


🔷 4. なぜ王水でしか金が溶けないのか?

金(Au)は「イオン化傾向がほぼゼロ」の金属。
つまり、通常の酸では電子を奪われず、溶けないのです。

それでも王水で溶ける理由は:

  • 硝酸で強制的に酸化
  • 塩酸で錯体形成による引き抜き

この“酸の共闘”により、金を無理やりイオン化して引きずり出すのです。


🔷 5. 王水の危険性──最強ゆえのリスク

❗ 危険ポイントまとめ:

  • 極めて強い腐食性:皮膚・衣服・金属すべてにダメージ
  • 毒性ガスが発生:NO₂(二酸化窒素)、Cl₂(塩素ガス)など
  • 発熱反応:混合時に大量の熱が発生し、爆発リスクあり
  • 揮発性あり:放置しておくとガス発生・圧力上昇の可能性も

➡️ 王水は“その場で作る”もので、長期保存には適しません。


🔷 6. 王水の使用例──どこで使われている?

● 実験・工業・医療などで幅広く使用されています。

  • 🔬 金属の精製・回収(リサイクル)
  • 📊 微量金属の定量分析(ICP-MSなど)
  • 🧼 半導体・基板の洗浄
  • 🎨 美術品修復やメダル溶解(歴史的エピソードあり)


🔷 7. 実話:ナチスから金メダルを守った「王水の奇跡」

1930年代、ノーベル賞受賞者のマックス・フォン・ラウエらの金メダルを、ナチスに奪われないよう化学者ジョージ・デ・ヘヴェシー王水に溶かして隠したという逸話があります。

戦後、彼は溶けた金から再びメダルを作り直しました。
まさに「化学が人を救った」実話です。


🔷 8. 王水でも溶けない金属もある?

意外かもしれませんが、王水をもってしても完全に溶けない金属もあります。

  • タンタル(Ta)
  • イリジウム(Ir)
  • チタン(Ti)
  • タングステン(W)

これらは酸化皮膜を作って自己防御するため、王水でも分解困難。


🔷 9. まとめ|王水とは“酸の芸術”

  • 王水は【濃塩酸+濃硝酸】の混合液(3:1)
  • 金が溶けるのは「酸化+錯体形成」の合わせ技
  • 極めて危険な液体で、専門家以外の使用は厳禁
  • 金属分析・貴金属精製・歴史的救出劇にも使われた

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