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2025年ノーベル生理学・医学賞:坂口志文教授が切り拓く免疫の新時代

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2025年10月6日、スウェーデン・カロリンスカ研究所は、坂口志文(さかぐち しぶん)教授をはじめとする3名に、「末梢免疫耐性のメカニズムに関する発見」としてノーベル生理学・医学賞を授与することを発表しました。坂口教授は、制御性T細胞(Treg)を発見し、免疫系が自己組織を攻撃しない仕組み(免疫耐性)を解明したことで、自己免疫疾患やがん免疫療法の新たな治療法に大きな可能性をもたらしました。


坂口志文教授と受賞者の研究背景

坂口教授の経歴

  • 生年・出身:1951年、滋賀県長浜市
  • 学歴:京都大学医学部卒業、京都大学大学院博士課程修了
  • 職歴:ジョンズ・ホプキンス大学、スタンフォード大学で研究後、京都大学免疫学フロンティア研究センター教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授

坂口教授は、長年にわたり免疫系の自己制御メカニズムの解明に取り組みました。1995年には、T細胞の中でも免疫反応を抑制する特殊なサブセットを発見し、これを「制御性T細胞(Treg)」と名付けました。

ブランコウ氏・ラムスデル氏の貢献

  • メアリー・ブランコウ氏:Foxp3遺伝子変異がマウスの自己免疫疾患の原因となることを発見
  • フレッド・ラムスデル氏:Foxp3変異が人間のIPEX症候群(自己免疫疾患)に関連することを示す

これにより、Treg細胞の機能と遺伝子の関係が明らかになり、免疫耐性の分子メカニズムが解明されました。


免疫耐性とは?—自己を攻撃しない仕組み

免疫系は感染症や腫瘍から身体を守る重要な役割を担います。しかし、免疫細胞が自己組織を攻撃すると自己免疫疾患が発生します。

制御性T細胞(Treg)の役割

Treg細胞は、他のT細胞やB細胞の活動を制御し、自己抗原に対する過剰な免疫反応を抑制します。

  • 特徴
    • CD4陽性T細胞の一種
    • Foxp3遺伝子に依存して発達
    • 免疫応答の抑制、炎症の制御、自己耐性の維持

Treg細胞が正常に機能しない場合、自己免疫疾患(1型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症など)が発症します。


研究の詳細と発見の科学的意義

坂口教授は、末梢組織での免疫耐性に注目しました。従来の研究は胸腺でのT細胞成熟に焦点を当てていましたが、坂口教授は成熟したT細胞が体内でどのように自己攻撃を抑えるかに着目しました。

主要な発見

  1. Treg細胞の発見
    • CD25陽性T細胞の一部が、他の免疫細胞の活性化を抑制する
    • これにより、自己抗原に対する過剰反応を防ぐ
  2. Foxp3遺伝子の重要性
    • Treg細胞の分化・機能にはFoxp3が必須
    • Foxp3変異により、免疫耐性が崩壊し自己免疫疾患を発症
  3. 免疫抑制メカニズムの分子解明
    • Treg細胞はサイトカイン(IL-10、TGF-βなど)を介して抑制作用を発揮
    • 他のT細胞や樹状細胞を直接抑制することで免疫の暴走を防ぐ

この発見により、自己免疫疾患の根本的なメカニズムが初めて分子レベルで理解されることになりました。



医療応用の具体例

1. 自己免疫疾患

Treg細胞を増やしたり機能を強化することで、1型糖尿病や関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療が期待されます。例えば、Treg細胞の移植や分化促進によって、自己免疫反応を抑制する治療法の研究が進んでいます。

2. がん免疫療法

Treg細胞は腫瘍微小環境に集まり、抗腫瘍免疫を抑制することが知られています。逆に、Treg細胞を特異的に抑制することで、免疫チェックポイント療法と組み合わせたがん治療が可能になります。

3. 移植医療

移植片に対する免疫拒絶はT細胞が関与します。Treg細胞を利用することで、拒絶反応を抑制し、移植片の生着率を向上させる戦略が開発中です。



将来の展望

坂口教授らの研究は、今後の医療における応用可能性が非常に広いです。

  1. 自己免疫疾患の根治的治療
    • 現在は症状抑制が中心ですが、Tregを標的にした治療で根本治療が可能に
  2. 個別化医療の進展
    • 患者ごとの免疫プロファイルに合わせてTreg誘導療法を調整
  3. 新しいがん免疫療法の開発
    • Treg抑制と免疫チェックポイント阻害の組み合わせによる高精度治療
  4. 移植医療や炎症性疾患への応用
    • 移植片生着率の向上
    • 慢性炎症疾患への新たなアプローチ


まとめ

2025年のノーベル生理学・医学賞は、坂口志文教授らの「制御性T細胞と免疫耐性」の解明に授与されました。彼らの発見は、自己免疫疾患、がん、移植医療など、多くの分野において治療法の革新と医療の進歩をもたらす基盤となります。

今後、Treg細胞に基づく治療法が臨床応用されることで、多くの患者にとって希望となる未来が切り開かれることが期待されます。

参考文献

📚 参考文献

  1. Reutersの記事「Brunkow, Ramsdell and Sakaguchi win Nobel medicine prize for immune discoveries」では、坂口志文教授をはじめとする3名の受賞者の業績とその意義について詳述されています。 Reuters
  2. Financial Timesの記事「Nobel Prize in medicine awarded for immune system breakthroughs」では、免疫系の自己制御メカニズムに関する研究の詳細と、それがもたらす医療への影響について解説されています。 フィナンシャル・タイムズ
  3. AP通信の記事「The Nobel Prize in medicine goes to 3 scientists for work on the human immune system」では、受賞者の研究成果とその医療応用の可能性について述べられています。 AP News
  4. The Washington Postの記事「Nobel Prize in medicine awarded for discoveries about the immune system」では、免疫系の自己認識と耐性に関する研究の重要性と、それがもたらす未来の治療法について詳しく説明されています。 The Washington Post
  5. Nobel Prize公式サイトの「The Nobel Prize in Physiology or Medicine」では、2025年のノーベル生理学・医学賞の受賞理由や受賞者の業績について公式な情報が提供されています。 NobelPrize.org

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